2023年度お花見会の実施
コロナ禍を過ごしたのちに、
訪れる時間の温かさ。
2023年春、冬の寒さが和らぎ、関東地方でも桜が満開となる3月末、待望の「お花見会」が当院敷地内で行われました。患者様と職員が共に集う行事はコロナ禍以後では初めて。久々の院内活動となります。
パンデミックの3年間、世界レベルでコロナウィルスによる感染爆発(クラスター)を防ぐため、多くの集団的な取り組みを必要とする行事は、強制的、もしくは自主的に中止、廃止されてきました。日常生活においても個人の冠婚葬祭までその対象となり、普段の生活でならあり得ないような悲しみや不自由さを私たちは共に経験してきたのです。感染に対する恐怖と強い抑圧の下、生活を変えシステムを変更し、その限られた条件の中で業務を行なってきました。
脆さと共にしたたかさを秘めた日常という強靭な惰性。特に医療施設の職員には業務上大きな負荷がかかったままの日々が続き、先の見えない日々を過ごしていたのです。患者様においても多くの制約や不自由さを求めることとなり、それでもそんな日々はいつか終わりが来ると、誰もがわかってはいたのです。
ただその「解放」の日は、そう単純に何月何日で終わりというものではありません。これからも長く日常化していかなくてはならない、社会的な衛生対策との並走です。身についてしまったマスク着用やソーシャルディスタンスの確保、頻繁な手指のアルコール消毒、パーテーションを設置しての隔離、日常的な健康管理の意識向上とタイムリーな検査の実施。これらはこれからも継続していくべき課題となっています。
43年前、この土地に精神科医療の拠点として設けられた「宇都宮西ヶ丘病院」は、その活動を通し地域医療に貢献しています。豊かな自然に囲まれた独自な佇まいは、現在多くの利用者を迎え、外来診療、入院治療と大きくその役割を果たしています。
敷地に植えられている約四十本の桜は、当院が開設された時期にさかのぼります。ゆう然とたたずみ、時の経緯を象徴するような無骨な桜の姿は、人間社会に起きた出来事とは無縁に、季節の移ろいに従い芽吹き、咲き誇り、散り、そしてまた冬の寒さを耐えて乱舞する姿を見せています。
今回の「お花見会」も病院全体一斉にではなく、院内4病棟毎にグループ分けしての実施ではありました。それぞれ日をずらし、少人数で回数を増やしての実施です。久しぶりに触れる外気と春の日差し、その空間で無心になって桜の饗宴に目を移し、風に舞う花びらを追い続けるひと時の温かさ。
突然身に降りかかる自然の猛威。あの激動の日々をくぐり抜け、そして共にここに辿り着けた静かな祝福を、じんわりと味わえた時間でした。