年間行事

2015年09月27日(日) 褥瘡対策講演会・在宅褥瘡セミナーに参加

日本褥瘡学会関東甲信越地方会栃木県支部
第12回褥瘡対策講演会
日本褥瘡学会在宅褥瘡医療ネットワーク委員会
第9回在宅褥瘡セミナー(栃木)

日 時:平成27年9月27日(日)9時より16時30分
会 場:獨協医科大学30周年記念館 間湊ホール
参加者:3東 准看護師 千葉香代子

研修に当たって

当院においても、入院患者様の高齢化に伴い、褥瘡対策の充実が常に求められています。褥瘡対策は日常的な配慮によってその経過が大きく左右されますので、確かな知識と適切な技術の習得が欠かせません。今回参加させていただきました「褥瘡対策講演会」では、褥瘡に関する全体像の把握とそれぞれの各論を、午前午後、6回の講義に分けて行われました。その経過と講義内容の一部を紹介させていただきます。

褥瘡(日本褥瘡学会による定義)

体に加わった外力は、骨と皮膚表層の間の軟部組織の血流を低下、あるいは停止させる。この状況が一定時間維持されると組織は不可逆的な阻血性障害に陥り褥瘡となる。

講義1

「在宅における褥瘡管理の推進」
とちぎ訪問看護ステーションおやま
所長 永井恵子 先生

在宅のおける褥瘡対策の課題として

1)在宅における褥瘡療養の現状は社会情勢を範囲している。超高齢化社会、老老介護、独居、認知症、経済的困窮。
2)病院、施設、地域との包括ケアの中での褥瘡対策、対応の必要性。
3)家族、介護者、サービス事業者の褥瘡予防に対する正しい認識。
4)在宅褥瘡管理の主となる訪問看護師のスキルアップ。

の4項目が挙げられていました。特に訪問看護師の意識によってケアに大きな差が出てしまうという点が印象に残りました。

講義2

「褥瘡の褥瘡発生とアセスメント」
佐野厚生総合病院皮膚科
田村政昭 先生

褥瘡予防におけるリスクアセスメントとは、褥瘡予防の基本は褥瘡発生の危険性(リスク)を評価(アセスメント)し、リスクに応じた褥瘡予防ケアを行うこと。

在宅における褥瘡予防のリスクアセスメントとは、1)原則として看護師または医師が週1回実施する。2)比較的元気に過ごしていた人も、状態の変化に伴って褥瘡が発生する可能性があることに留意する(転倒、骨折、慢性疾患の長期化)。3)介護力の項目が入っていないツールでは同じ危険因子を持つ在宅療養者も介護力の程度によって褥瘡発生率が異なるとのこと。

褥瘡を同じ評価基準で評価し(DESIGN-R)、医師、看護師、医療従事者が、共通の認識で改善に取り組むことが重要だと教えられました。

講義3

「褥瘡の予防と管理:圧迫・ずれ力とリハビリテーション」
自治医科大学附属病院リハビリテーション部
寺門大輔 先生

ポジショニングとは?

・患者が楽になるために、あるいは診断、外科手術、治療処置を容易にするために取る体位または姿勢。
・患者が生理的および心理的に満足するために、患者自身あるいは患者の身体の一部を熟慮して位置づけること。
・運動機能障害を有するものにクッションなどを活用して身体各部の相対的な位置関係を設定し、目的に適した姿勢(体位)を安全で快適に保持することをいう。
・ずれ力とはー体位変換(仰臥位から側臥位、ベッドアップ、ベッドダウン)など、姿勢が大きく変化する時にずれ力は生じやすい。

様々な体圧分散用具を使ってダメージを軽減してゆく。

講義4

「褥瘡の予防と管理:スキンケア」
獨協医科大学日光医療センター 看護部
柿沼貴子 先生

皮膚の生理機能

1)保護作用(バリア機能)
2)知覚作用(触覚、温覚、冷覚、痛覚)
3)体温調節作用
4)呼吸作用
5)分泌
6)吸収作用

これらは加齢によって皮膚が脆く、弱くなる。→ダメージを受けやすく回復しにくい。

「在宅での褥瘡管理の留意点」
・患者、家族への指導、スキンケア用品や失禁ケア用品の購入にあたっては、費用対効果や労力等について考慮する。その上で実施可能な方法を一緒に話し合って決定する。
・入浴やシャワーの際に創周囲皮膚の洗浄を行う。ただし、感染徴候や黒色壊死がある場合、皮膚科、形成外科位、皮膚、排泄ケア認定看護師など専門家に相談すると良い。

講義5

「褥瘡の予防と管理:栄養」
自治医科大学附属病院 臨床栄養部
村越美穂 先生

・栄養アセスメント
・体重測定、体重変化による評価
・何か一つの栄養素に特化するのではなく、先ずは不足の補充から。
・喫食率50%以下では、高タンパク、高エネルギーの補助食品を追加し、さらに不足分は経口以外の方法によって栄養補給を検討する。

講義6

「褥瘡の治療」
自治医科大学皮膚科
前川武雄 先生

在宅褥瘡治療の流れ

1)治癒か現状維持か目標の設定
2)急性期は連日の創の観察
3)慢性期はDESIGNに基ずいた治療
4)局所治療だけでなく、体位、寝具、基礎疾患、栄養、リハビリ、本人家族への説明など、総合的な治療が必要とされる。

創傷治療における優先順位

1)最も優先すべきは感染、局所感染→敗血症→死
2)次に壊死組織、壊死組織も放置すれば感染の原因に。
3)次に浸出液。過剰な浸出液はやはり感染の温床に。
4)次いでポケット。保存的治療には限界が。
5)深さ、大きさ、肉芽などは、直接改善させるものではなく、上の4項目が改善することによって、間接的に改善されていくもの。むしろ治療効果判定の指標となる。つまり上の4項目が適切にコントロールされていれば、深さや大きさは縮小し、肉芽は良性肉芽が主体となっていく。

感想

褥瘡対策は非常に多岐にわたっており、それぞれに対して適切な評価と適切な対応が求められています。幅の広い知識を持って、日々詳細に観察しその対策に努めていきたいと思います。

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